排ガス規制とは、車両から排出される有害物質を削減し、大気汚染を防止するための基準です。一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などの排出量を制限します。日本では、1966年に初めて排ガス規制が導入されて以来、段階的に基準が強化されてきました。
排ガス規制の歴史と目的
日本の排ガス規制は、1966年にガソリン車に対する一酸化炭素(CO)の規制から始まります。当時、アメリカの都市部では排気ガスによるスモッグが問題となり、人体に悪影響を及ぼす有害物質の削減が求められていました。これを受けて、日本でも一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)の規制が導入され、その後、1973年には窒素酸化物(NOx)の規制も加わりました。1978年には、世界で最も厳しいといわれる排ガス規制が施行され、現在では地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減も目的とされています。
令和2年排出ガス規制の概要
最新の「令和2年排出ガス規制」は、世界で最も厳しいとされる欧州の「EURO5」と同等の基準で、2020年12月から新型車、2022年11月からは継続生産車にも適用されています。この規制により、排出ガスを浄化する装置の劣化を監視する「車載式故障診断装置(OBDⅡ)」の搭載が義務付けられました。ただし、50cc以下の原動機付自転車については、2025年10月末まで猶予期間が設けられています。
排ガス規制がバイクに与える影響
このような規制強化により、各メーカーは対応を迫られ、多くのモデルが生産終了となりました。50cc以下の原付バイクは、OBDⅡの搭載に高額なコストがかかるため、生産が終了。125cc以下のバイクに50cc以下にまで出力制限をかけた新基準原付の制度が導入されます。しかし、既に購入済みの原付バイクは引き続き乗ることが可能です。
さらに、排ガス規制の強化は、バイクの価格上昇やモデルの生産終了など、市場全体に大きな影響を及ぼしています。そのため、今後は電動バイクや水素エンジンなど、環境に配慮した新技術の開発が進むと考えられます。
今後の展望
排ガス規制の強化に伴い、バイク業界では電動バイクや水素エンジンなど、環境に優しい新技術の開発が進められています。
ヤマハの電動スクーター「E-Vino」などが既に市場に投入されています。また、トヨタを中心に水素エンジンの開発も進められており、バイクメーカーと自動車メーカーが協力して環境負荷の低減に取り組んでいます。
このように、排ガス規制は環境保護の観点から重要な役割を果たしていますが、バイク業界やユーザーにも大きな影響を与えています。